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小春日和の本堂の広縁、お住職さんがむずかしいお話の最中です。
「仏の道に入ったからには、一に精進、二に精進。牛、馬、鶏、食すべからずとは、恐れ多くも天武帝この方の永のおきてです。卵?イヤ、それもお断りじゃ。和泉の里で鶏の卵をしじゅう盗み食いしておった男が、生きながら灰河地獄におちたという話もありますゾ」
さて、そこへ現れた檀家のだれやらが、長崎土産でございますと、カステラの折り箱をドンと。
「ははァ、カステラとな?なに、かまわん、かまわん。卵がどっさり入っておっても、カステラとなればナ、よろしいのじゃ。そこへおいておきなさい……」
と、そんなユーモラスな情景をうたったのでしょう、雑俳『長ふくべ』に選ばれた一句です。

この句集は「前句付け」といって、七七の前句に合わせて五七五の句を付ける、ま、遊びの俳句というか、その秀逸作を集めたもの。たとえば「はやい事かなはやい事かな」と来れば「こねるやら打やら切るやら湯でるやら」と応えるといった要領。「かすてらとなれバ」の句は「大事ないもの大事ないもの」という前句に付けられています。頃は享保年間。
八代将軍吉宗のお声がかりで国産砂糖の試作も始まりました。カステラの甘みも、卵の色も、いっそう濃くなった時代でしょうか。
(A)
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