季節のかすてら噺 平成18年夏号
カステラ噺、東と西。 カステラと落語と申しますと、まずはご存知「禁酒番屋」
さる藩に酒のうえでの事件があって、禁酒令がしかれます。武家屋敷のお得意様からどうにかして酒を届けろと頼まれた出入りの酒屋が頭をひねり、カステラの箱に五合徳利(どつくり)を二本忍ばせ、水引きをかけて、番屋に出向く。

近藤様のご注文、カステラでございます。
あの酒好きの近藤氏がカステラだと。あけて見せろ。
それがご進物用で。
進物か、さもあらん。それなら通れ。
では……どっこいしょ。

イラスト1
待て、カステラとはさように重いものか。
あ、どっこいしょは手前の口癖(くちぐせ)で。
いいから、出せ、出さんか。
お、徳利ではないか。徳利(とつくり)に入るカステラがあるか。
「それが、その……これは水カステラ」

上方落語には「鴻(こう)の池の犬」がございます。
浪速の豪商、鴻池家(こうのいけ)の坊ちゃんがかわいがっていた犬に似ているというので貰われてきた黒犬の黒は贅沢三昧の毎日。

イラスト2
イラスト3
「チョッチョッチョッ、黒や、黒や」せっせと駆け出していったかと思うと、おおきな鯛をくわえてまいります。
「チョッチョッチョッ、黒や、黒や」またせっせと駆け出していく。今度は、カステラ。

ゆえあって野良に身を落としていた弟犬の白に惜し気もなくそのカステラを食わせてやる兄貴犬の黒……こりゃ結構なカステラや。兄さん、どっかで盗んで来やはったんか。阿呆いうな、さあ、早う食べんか。兄さん、少(ちや)と口をつけて。
上方らしい情のこもったお噺でございます。
(A)


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